キイジョウロウホトトギス

大学のセミナーでご縁が出来た方からお誘いをうけ、紀伊半島へ。目的はキイジョウロウホトトギス。開花期は2週間ほどと短いそうだが、ちょうど見ごろで、その華やかさと上品さに魅せられた。
水が滴る壁面に釣り下がるように生育する。訪問した地域は昔ながらの狭い道路が多かったが、その道路沿いの壁面に生育していた。道路の付け替えや拡張工事によって、本種の生息地が急速に減り、絶滅危惧種となっている。種の保存法あるいは天然記念物の指定を求めて長年調査されている先生がいらっしゃるが、地元では指定することで道路工事に支障が出ることが懸念されているという。高速道路も鉄道も通っていないこの地域では、道路の整備は切望されている事業だろう。どうバランスを取っていけるのだろうか。

オニバスの種子

オニバスの種子を初めて見せてもらった。果実が裂開するとゼリー状の膜(仮種皮)に包まれた種子が散布される。仮種皮は浮き袋のような役割をしていて、種子は水面にプカプカ浮いている。水面を漂ったあと、この仮種皮は半日から数日で取れ、種子が沈むという。うまく出来ているものだな。写真は裂開したての仮種皮に包まれた種子。赤みを帯びていて美しかった。

サクユリ

大島の三原山に見られるサクユリ。溶岩流跡地の遷移途中の場所に生育する。
やせた土地に華やかな大きな花を咲かせているのでよく目立つ。伊豆諸島に自生する伊豆諸島固有種であり、ヤマユリの変種である。草丈、花径とも世界最大のユリとされているが、このやせ地でよくこんな大型になれたと関心する。伊豆諸島ではハチジョウススキやラセイタタマアジサイなど、本土の近縁種と比べて大型化した近縁固有種がいくつか知られている。特にラセイタタマアジサイの葉の大きさは驚異的だった。自分自身の葉で被陰されてしまっているくらい。どんな進化の歴史が潜んでいるのだろうと想像力がかきたてられる。

ササの衰退

Eriophyton2016-06-14

秩父演習林の方と一緒にササの遺伝解析をすることになったので、秩父にサンプリングしに行った。秩父の山はニホンジカの採食圧によって林床植生が衰退している。それに加え、スズタケの一斉開花後の枯死が続いている。一面のスズタケの枯死状況を見たときは衝撃だった。これまで一面を覆っていた植生が一気に無くなることで、土壌の水分保持機能や物質循環が大きく変わるだろう。
本来日本の山は、登山道以外は藪で歩きにくいものだが、綺麗な林床で歩き放題だ。