写真の比較3

木曽駒ヶ岳で2008年より調査を始めて4年。わずか4年なのだけど、調査区のいくつかは植被率が随分増加した。

低温で特徴づけられる高山帯では、植生変化あるいはバイオマスの増加はごくわずかだと思っていたので、数年で目に見える変化があることに少々驚いた。2010年の夏が記録的猛暑で、平年より1.5度ほど高かったことが一因だろうか。しかし、短期間の結果からは、長い自然の営みの傾向は評価できない。植被率の増加は長期間の傾向なのか、あるいは植被率は短期間で増加したり減少したりして安定しているのか。
もう少し長い傾向を見出すために、昔に撮影された写真を活用していこうと思う。

日本の山小屋

夏休みは相棒のフランスの友人が日本の山をトレッキングしたいとやってきて、共に新穂高へ。あいにくの天気の中、ひたすら急登する笠新道を経て、笠ヶ岳山荘に泊まった。彼女は日本の立派な山小屋に驚きつつ、長い行程に疲れもみせず写真を撮りまくっていた。
私はいつも中央アルプスの山小屋に泊まっているので、北アルプスの山小屋の綺麗さ・サービスの良さに感心した(更衣スペースがあったり乾燥室があったり。そして食事も良い)。北アルプスは色々な登山ルートがあり、登山者も多く、山小屋の競争が激しいためだろう。
彼女の話によると、日本の山小屋の宿泊料はヨーロッパアルプスよりもかなり高いそうだ。日本の山小屋はホテルのように快適に高価になる方向を目指しているのだろうか。

木曽駒ヶ岳

NPO法人山の自然学クラブで行っている毎年恒例の木曽駒ヶ岳植生モニタリングに行ってきた。
今年は国立環境研究所や筑波大学信州大学の方々と一緒に調査をする機会を持てて新鮮だった。信州大グループは重たい精密測量機器を持ってきて、調査地周辺を測量し、NPOメンバーは、5年間木曽駒で調査をしてきた経験を生かし、測量した場所の植生調査に協力した。
自分達だけでは出来ないことが実現できるし、活動の幅が広がるし、今後も色々なコラボレーションが実現するといいな。

写真の比較

山の湿原に行って38年前と同じ写真を撮ってみた。木道が出来たことで、登山道の緑が見事に回復していることが分かる。そしてオオシラビソが成長し、低木地帯が少し広がっている。遷移が少しづつ進んでいるのだろう。自然の遷移なのか、温暖化による乾燥化が一因なのかは分からないけれど、こういった地上写真を比較するだけでも、自然の移り変わりが見えてくる。今後は地上写真の比較をいかに定量的に行うかが課題だ。

山岳写真データベース

日本山岳会の自然保護委員会との連携で過去に撮影された山岳写真のデータベースが出来た。
http://www.mountain-photo.org/

このDBは過去に撮影されたアナログ写真をアーカイブすることが目的だ。昔から山々を眺めてきた人達の記録を残しておきたいと思い始めて3年以上。ようやく出来た…。
人の住んでいる場所は、人の生活の歴史を物語る昔の写真のアーカイブ化が進められている。人の住んでいない場所でも写真の価値は同じだと思う。写真は調査記録に代わる客観的な記録となりえる。

データベースの作成はスタートで、ようやくこれらの写真を活用した研究を進められる地点に立てた。

涸沢

3連休は夜行で中房温泉に入り、西岳、槍ヶ岳、南岳、北穂高岳、涸沢を通り、上高地へ抜けた。
初日の西岳のテント場では静かな初冬の山並みを満喫した。が、夜は当然のごとく零下で寒くて熟睡できなかった。
翌日は北穂高岳のテントサイト(3000m)を予定していたが、寒さを逃れるために涸沢(2300m)へ下山。上高地からお手軽に入れる涸沢は大混雑が予想されたが、一度有名な紅葉を見ておこうとあえて向かった。が、今年は色づく前に寒さで枯れてしまい、近年最悪の紅葉だったそうだ。まあでもカラフルな紅葉が無くても素晴らしいパノラマビューは人を惹き付けるには十分だろう。

テント場は予想通りの大混雑。今年は天気が良かったことも手伝って連休初日は過去最高のテント数(1200)を記録したとか。私がついた16時にはテント場は埋め尽くされ、条件の悪い場所しか残っていなかった。岩場の隙間に何とかテントを張ったが、下の岩が体にあたり熟睡できなかった。そして朝のトイレは長蛇の列で40-50分待ち。
それでも雲一つない快晴の中、山歩きを堪能した。でも、もう涸沢に行くことは無いだろう。