荻原健司

荻原健司―栄光と苦悩
著:荻原 次晴,出版社:文春ネスコ,ISBN:4890361618,(2002/07)
ノルディックスキーの第一人者である荻原健司の生き様を、一卵性双生児の弟である次晴がつづった本である。私も一卵性双生児だが、私は次晴の心を考えると胸が痛い。一卵性双生児は必要以上に片方と比較されるので、相手に対し少しでも劣る面があると大きなコンプレックスとなる。健司はキングオブスキーと讃えられ、次晴はその兄の代わりとして扱われたこともある。どんなに辛かったか、そして寂しかったか。
「健司が勝ち続けていた栄光のただ中にいる間、健司が遠くにいってしまったような感じだった。」「健司が思うように勝てなくなり、同じレベルで話ができるようになり実はうれしかった。」そう告白する次晴の気持ちがすごく分かる。そして、兄ともう二度と間違われたくない、自分もアスリートとして世間の人に認めてもらうんだという次晴の切実な欲求も。次晴は長野オリンピックで6位入賞をはたし、満足したと引退する。
この本は健司が主人公なのに、この本をどんな気持ちで書いたのかと次晴のほうに感情移入してしまった。