雷鳥

雷鳥が語りかけるもの 中村 浩志
出版社: 山と溪谷社 (2006/08)

高山帯に住む雷鳥は、人を恐れないことから近くで観察できる鳥として登山者に人気がある。しかし、人を恐れないのは日本だけのようだ。著者が外国の雷鳥を調査しに行ったときは、雷鳥がすぐ逃げるので写真を撮るのでさえ苦労したという。その原因として文化の違いを挙げている。外国では雷鳥が狩猟対象とされたり、高山帯が放牧に利用されていたりする。一方、日本では山岳信仰があり、雷鳥は高山にすむ神の鳥として、古来からあがめられてきた。

かつて中央アルプスにも雷鳥がいたが、今は見られない。昭和42年にできた「駒ヶ岳ロープウェイ」により、観光客が激増したのが一因だろうと言われている。日本人が大切にしてきた雷鳥だが、その減少にも貢献しているのはさびしことだ。
さらに近年は鹿や猿などが高山帯にまでやってくる。その食害により高山植生が変化しているという。その影響は高山帯の生物にどのようにあらわれてくるのだろう・・・